ノルディック・ウォーキングというのは、スキーのストックのような物を手に持って、地面にストックを突きながらウォーキングするそうですが、少しその運動で体のバランスを崩す方がいらっしゃるようなので、お伝えしておきたいと思います。
おそらくストックを地面に突きながら歩くことによって、上半身も使うから全身運動になって良いというのが狙いだと思うのですが、人類は四足歩行から二足歩行に進化していくことによって、上半身で体を支える必要性がなくなってきました。 むしろ手や腕は歩行のための手段から、物を握ったり投げたり、細かい作業や操作をしたりし、ある程度巧緻性が求められるようになってきました。
したがって、歩行時などではあくまでバランスが崩れた時の補助的な役割にとどまり、掴まって登ったりするような激しい運動を除けば、手や腕は主体的に使われなくなってきました。
ただ高齢化にともなって、足腰の力が衰え、二足では支えられなくなってきた場合、杖をついたり、手押し車を押したりして体を支えたり、立ち上がる時に「よっこいしょ!」と言って、腕で何かに掴まり立ち上がるようになっていきます。
ただ二足で健康に歩ける人が、ストックのような物を使って歩行の際に手や腕、上半身に力を入れてしまうことは、本来支えるべき足腰が主体的に働かず、手や腕で体を支える習慣が自然に身に付くようになってしまいます。 いわば、「いつでも杖をつけるようになるための練習」をしていると言っても過言ではありません。
手や腕は、歩行の際には力が抜けていて、しなやかにゆったりと振れていることが理想的です。 上半身の力が抜ければ、自然と重心は下半身に集まり、足腰を鍛えることができます。
スポーツ選手でもよくあることですが、「衰えたくない!鍛えたい!」という気持ちが強くなればなるほど、なんでもかんでも力を入れることばかりに一生懸命になりがちです。 当然力を入れることも重要ですが、力を入れるところと抜くところのバランス感覚が非常に重要になってきます。 そして、筋力というのは、力が抜けた状態から力が入ることによって、力が十分に発揮されます。これが大切なポイントです。
本来スキーのストックは不安定なところでバランスを保つために使われます。 しかし、陸上では、杖の代わりのように使ってしまいがちです。 そこの力加減が非常に難しいところなので、二足歩行が問題なくできる方は、二足でしっかり歩かれることをお勧めいたします。