先日行われました、全日本モトクロス選手権第4戦 近畿ラウンド(名阪)におきまして、チームカワサキR&Dから、アメリカで絶賛活躍中の若干二十歳の日本人ライダー、下田丈選手が凱旋帰国し、スポット参戦しました。
当初の予想通り、モトクロスの本場アメリカで鍛え抜かれているとあって、圧倒的な力で2ヒートとも優勝という、文句なしの結果を残しました。
会場も下田選手観たさで集まった大観衆で、我々カワサキスタッフも能塚選手と下田選手という2ライダー体制ということもあって、てんやわんやでしたがモトクロス界にとっても非常に大きな影響を与えてくれたと思っています。
さて、私トレーナーとして今回能塚選手と並行して、下田選手の体も診させていただく機会がありました。
といいますのも、普段下田選手は大きな怪我などはほとんどしたことがなく、アメリカでもあまり体を触ってもらうことはなかったそうなのですが、今回1ヒート目に転倒し、少し首と腰を負傷したとのことで、診ることとなりました。
実際体を触ってみて感じたことですが、とにかく「非常に柔らかい」それに尽きると思います。
筋肉がプリンや豆腐のように弾力があり柔らかく、筋肉が隆起してムキムキゴツゴツという感じはありませんでした。
それはおそらくアメリカという環境がそうさせたんだと思います。
アメリカでは週一回のペースでレースがあり、休む間もなく連戦が続いていきます。そこで疲労をいちいち溜め込んでいたら、次のレースにはベストで臨めません。
ハードなレースの中でもいかに力を抜いて力まないかが重要になってくるので、必然的にアメリカ仕様の体になっていったんだと思います。
また、モトクロス選手はたいてい鎖骨骨折や肩鎖関節脱臼や捻挫や打撲などしょっちゅうで、過去に大きな怪我をしていない選手の方が珍しく、その点下田選手の場合、アクシデントがあっても力を上手く逃がせている証拠だと思います。
力で勝負しようとすると、体とマシンと地面との間で衝突が起き、転倒やペースダウンにつながってしまいます。
下田選手のように、ムリがなく、衝撃を上手く吸収し、乗馬のようにマシンと一体となり、無駄に土煙を上げないロスのない走りをし、普通ならコケるような体勢になってもコケずに、不安定を許容したような走り方はまさに厳しい環境で培った「力まない」能力の賜物だと思います。
来シーズンも凱旋してくれると思いますが、来年は能塚選手が下田選手に食らいつくような走りができるよう、足りないところを強化していきたいと思っています。